Vol.1 築50年の味を残しつつ、子育てにやさしいこだわりの家を叶えたい
2017年7月18日(火)
リノベーションのリアルな現場をお伝えする「リノベ密着レポ」
第三弾は築50年のおじい様の家をレトロな雰囲気を残しながら現代のライフスタイルに合わせ、安心して暮らしやすい住まいを目指したA様邸のリノベーションレポートです。
「これから10〜15年、子どもが育って巣立つまでの期間を、快適に楽しくのびのび暮らしたい。その先のことは、まだはっきりわからないから、今大きな予算は組めない。そういった中でも、家族みんなが住みやすい快適なお家に近づけたい!」がお客様の思いでした。
築50年の家にはどんな魅力があり、どんな課題があったのか、また限られた予算の中で目指した理想の住まいとは。全4回に渡ってレポートします。
◆思い出や昭和レトロに包まれる暮らしは悪くない、けれど・・・
築50年の亡くなったお祖父様の家に、数年前から暮らされているA様ご家族。この家で一番気に入っていたのは、お祖父様の思い出と重なる昭和レトロな雰囲気でした。たとえば、今では珍しい造作の木製玄関ドア、昔ながらの土壁、板張りの折り上げ天井など。サザエさんやちびまる子ちゃんに出てきそうな世界です。
と、ここまではとても微笑ましいお話。ところが、現実問題として、このまま住み続けるにはさまざまな課題があったようです。リノベーションのきっかけは、二人目のお子さまが生まれ、手狭になったこと。
既存図 1階
◆最大の課題は築古物件にありがちな寒さ、生活動線の悪さ
家族4人が暮らすには十分な135平米という広いお家。「どこが手狭なんだろう」と気になりますよね。実はこの家、使えるスペースが少なかったのです。1階南側の特等席にはお祖父様の仕事場だった洋室があり、遺品の仕事道具でずっとふさがっていました。2階には貸間にしていた部屋が5つありますが、何年も使われておらず、長年の間に蓄積され多くの物があふれ、納戸のような状態でした。
1階、お祖父様の仕事部屋。折り上げ天井がステキですが、物があふれて通れない状態でした。
貸間だった2階にはミニキッチンがありましたが、これも長い間放置されていました。
実質、生活スペースとして使えるのは、1階の玄関とダイニング・キッチン、東南の和室だけ。しかも、それらのスペースにも課題が。キッチンはダイニングを兼ねたスペースとしては手狭でした。そして隙間風や底冷えがあり、家族団欒を過ごす場所として厳しかったそうです。また、東南の和室は増築によって朝日が入りにくくなっていました。
北側のキッチンは出窓風に張り出したL型で天窓も備わり、50年前の家としては明るくモダンな雰囲気。ただ、ここにも物があふれてしまい、寒さも課題でした。
動線の悪さもこの家のウィークポイント。ダイニング・キッチンが狭く寒かったことから、食事は東南の和室でとっていました。食事の度にお料理を5〜6m離れた和室まで運んでは片付けるを繰り返していたわけです。赤ちゃんのお世話をしながらの行ったり来たりの家事動線や、寝室も兼ねた和室とキッチン・水回りが遠く、やはり子育てにはストレスでした。
黄色のラインが食事のための動線。とても長いので、サッと配膳や片付けができません。
◆限られた予算でどこまで理想の家に近づけられるか
今回のようなケースの場合、理想に向けてフルリノベーションする場合、とても大きな費用がかかります。建て替えを勧める工務店さんもあるかもしれません。
ただお客様は「10年以上先のことは、まだはっきりわからないから、大きな予算は組まずにリノベーションをしたい」という思いがありました。限られた予算の中で、暮らす期間を区切り「これから10〜15年、子どもが育って巣立つまでの期間を快適に楽しくのびのび暮らしたい」との事だったのです。このように条件が厳しく予算が限られている中で、できること・できないことを伝え、ご家族の想いに寄り添った、A様ご家族にぴったりの住まいってどんなお家だろうか…。プランナーは考えました。
◆1階を断熱で包むhouse in houseという発想で、心地よさを追求
そこで、プランナーが提案したのは賢く割り切る「house in house」という考え方。フルリノベーションを1階の内側だけで行います。基本的に2階や屋根、外壁には手をつけません。つまり「既存の家の中に、部分的に理想の家をつくる」ということ。予算内で断熱性や耐震性を確保しながら、暮らしやすく子育てが楽しくなる間取りを再構築します(断熱・耐震の詳細はVol.3で)。
◆キッチンを家の中心にレイアウトした、家事や子育てにうれしい間取りを
間取りのポイントは、キッチンを家の中心にレイアウトすること。これなら、お子さまを見守りやすく、どのスペースにもサッと動けます。リビング・ダイニングは一番日当たりのいい東南に配置。東側の納戸だった部分は減築して窓を設け、朝日をたっぷり取り入れる予定です。
理想に向けて間取りを一新。のびのび快適に子育てできる家を提案しました。
スムーズな動線と片付く収納もポイント。散らかりがちな玄関は、ベビーカーから三輪車、自転車まで収納できるよう、土間を2.5倍ほど広げます。また、南側のリビングと北側の水回りへの2Way動線を確保。北側の動線上には水回り・キッチン・パントリー・ウォークインクローゼットを配置し、自然な生活の流れの中で、必要なものを使う場所に収納しやすくします。
間取りだけでなくインテリアも一新しますが、玄関だけは既存のドアや壁、階段を補修して再塗装。お気に入りの昭和レトロな雰囲気をブラッシュアップします。
次回は「house in house」の考え方に基づき、家を部分的にスケルトンの状態にします。解体して見えてきたこと、既存で使うものと生まれ変わるものなどをレポートいたします。お楽しみに。
第三弾は築50年のおじい様の家をレトロな雰囲気を残しながら現代のライフスタイルに合わせ、安心して暮らしやすい住まいを目指したA様邸のリノベーションレポートです。
「これから10〜15年、子どもが育って巣立つまでの期間を、快適に楽しくのびのび暮らしたい。その先のことは、まだはっきりわからないから、今大きな予算は組めない。そういった中でも、家族みんなが住みやすい快適なお家に近づけたい!」がお客様の思いでした。
築50年の家にはどんな魅力があり、どんな課題があったのか、また限られた予算の中で目指した理想の住まいとは。全4回に渡ってレポートします。
◆思い出や昭和レトロに包まれる暮らしは悪くない、けれど・・・
築50年の亡くなったお祖父様の家に、数年前から暮らされているA様ご家族。この家で一番気に入っていたのは、お祖父様の思い出と重なる昭和レトロな雰囲気でした。たとえば、今では珍しい造作の木製玄関ドア、昔ながらの土壁、板張りの折り上げ天井など。サザエさんやちびまる子ちゃんに出てきそうな世界です。
と、ここまではとても微笑ましいお話。ところが、現実問題として、このまま住み続けるにはさまざまな課題があったようです。リノベーションのきっかけは、二人目のお子さまが生まれ、手狭になったこと。
既存図 1階
◆最大の課題は築古物件にありがちな寒さ、生活動線の悪さ
家族4人が暮らすには十分な135平米という広いお家。「どこが手狭なんだろう」と気になりますよね。実はこの家、使えるスペースが少なかったのです。1階南側の特等席にはお祖父様の仕事場だった洋室があり、遺品の仕事道具でずっとふさがっていました。2階には貸間にしていた部屋が5つありますが、何年も使われておらず、長年の間に蓄積され多くの物があふれ、納戸のような状態でした。
1階、お祖父様の仕事部屋。折り上げ天井がステキですが、物があふれて通れない状態でした。
貸間だった2階にはミニキッチンがありましたが、これも長い間放置されていました。
実質、生活スペースとして使えるのは、1階の玄関とダイニング・キッチン、東南の和室だけ。しかも、それらのスペースにも課題が。キッチンはダイニングを兼ねたスペースとしては手狭でした。そして隙間風や底冷えがあり、家族団欒を過ごす場所として厳しかったそうです。また、東南の和室は増築によって朝日が入りにくくなっていました。
北側のキッチンは出窓風に張り出したL型で天窓も備わり、50年前の家としては明るくモダンな雰囲気。ただ、ここにも物があふれてしまい、寒さも課題でした。
動線の悪さもこの家のウィークポイント。ダイニング・キッチンが狭く寒かったことから、食事は東南の和室でとっていました。食事の度にお料理を5〜6m離れた和室まで運んでは片付けるを繰り返していたわけです。赤ちゃんのお世話をしながらの行ったり来たりの家事動線や、寝室も兼ねた和室とキッチン・水回りが遠く、やはり子育てにはストレスでした。
黄色のラインが食事のための動線。とても長いので、サッと配膳や片付けができません。
◆限られた予算でどこまで理想の家に近づけられるか
今回のようなケースの場合、理想に向けてフルリノベーションする場合、とても大きな費用がかかります。建て替えを勧める工務店さんもあるかもしれません。
ただお客様は「10年以上先のことは、まだはっきりわからないから、大きな予算は組まずにリノベーションをしたい」という思いがありました。限られた予算の中で、暮らす期間を区切り「これから10〜15年、子どもが育って巣立つまでの期間を快適に楽しくのびのび暮らしたい」との事だったのです。このように条件が厳しく予算が限られている中で、できること・できないことを伝え、ご家族の想いに寄り添った、A様ご家族にぴったりの住まいってどんなお家だろうか…。プランナーは考えました。
◆1階を断熱で包むhouse in houseという発想で、心地よさを追求
そこで、プランナーが提案したのは賢く割り切る「house in house」という考え方。フルリノベーションを1階の内側だけで行います。基本的に2階や屋根、外壁には手をつけません。つまり「既存の家の中に、部分的に理想の家をつくる」ということ。予算内で断熱性や耐震性を確保しながら、暮らしやすく子育てが楽しくなる間取りを再構築します(断熱・耐震の詳細はVol.3で)。
◆キッチンを家の中心にレイアウトした、家事や子育てにうれしい間取りを
間取りのポイントは、キッチンを家の中心にレイアウトすること。これなら、お子さまを見守りやすく、どのスペースにもサッと動けます。リビング・ダイニングは一番日当たりのいい東南に配置。東側の納戸だった部分は減築して窓を設け、朝日をたっぷり取り入れる予定です。
理想に向けて間取りを一新。のびのび快適に子育てできる家を提案しました。
スムーズな動線と片付く収納もポイント。散らかりがちな玄関は、ベビーカーから三輪車、自転車まで収納できるよう、土間を2.5倍ほど広げます。また、南側のリビングと北側の水回りへの2Way動線を確保。北側の動線上には水回り・キッチン・パントリー・ウォークインクローゼットを配置し、自然な生活の流れの中で、必要なものを使う場所に収納しやすくします。
間取りだけでなくインテリアも一新しますが、玄関だけは既存のドアや壁、階段を補修して再塗装。お気に入りの昭和レトロな雰囲気をブラッシュアップします。
次回は「house in house」の考え方に基づき、家を部分的にスケルトンの状態にします。解体して見えてきたこと、既存で使うものと生まれ変わるものなどをレポートいたします。お楽しみに。