窓からの景色も提案。オーナー住戸のリノベーション 〜M様邸Vol.1〜
2017年10月25日(水)
リノベーションのリアルな現場をお伝えする「リノベ密着レポ」。
第4弾はマンションを外部修繕業者やさまざまな職人とコラボして再生している物件です。依頼者は賃貸マンション1棟を所有し、最上階メゾネットに3世代で暮らすオーナーM様ご家族。
ちょっと一般的なケースとは異なるのですが、スタイル工房が「柔軟にお客様のご要望にお応えしている」事例としてご紹介したいと思います。
◆ M様邸vol1. 窓からの景色も提案。オーナー住戸のリノベーション
◆ M様邸vol2. 大工や家具職人が力を合わせて 理想のリノベーションを追求
◆ M様邸vol3. 暮らしやすさはもちろん、空間の見え方や 色のニュアンスまで期待以上に
◆ 築30年による老朽化やデュアルライフをきっかけに、子世帯ご家族にとって暮らしやすい住まいを目指す
リノベのきっかけは建築から30年が経ち、雨漏りをはじめ老朽化が進んでいたこと。また、お母様がデュアルライフを始められたことで、主に暮らしているのが子世帯になり、生活スタイルが変わっていたことでした。そこで、外部修繕を行なうのと同時に、子世帯の暮らしやすい住まいにリノベーションしようというお考えになりました。
これがビフォー図面。2層分をつないだメゾネットタイプです。マンションでありながら2階建て戸建て住宅のようなつくり。
◆ のびやかで眺めがよく、遊び心のある住まいを目指して
プランニングは主に子世帯と進めました。そこで明らかになった以前の課題は次のようなもの。
◎おもしろいな、と思う空間にしたいが、スッキリと片付けられるようにもしたい
◎窓がたくさんあって明るく、最上階で眺めが良かったものの窓がシングルガラスサッシなので夏暑く冬は寒かった
◎床面積の割に収納が不足していた
◎大きな三角形の吹抜けはユニークだったが、そのおかげで書斎が狭かった
そこで、さらに眺望を楽しめ、遊び心がありながらも美しく片付く住まいをご提案しました。
左/明るい吹抜けを望む書斎。見晴らしはいいものの、ちょっと窮屈でした。右/ご家族みなさんモノづくりがお好きで、いろいろな創作活動をされているということで、リビングには多くのモノや道具があふれていました。
◆ 生活空間と窓の位置関係を見直して眺めをよくし、複層ガラスにすることで快適さもアップ
今回、リビングにある一番大きな窓は変更していません。この窓には額縁のような太い縁取りがあって、景色を風景画のように美しく見せていました。いいものや思い出の詰まったものは使い続けるということも、リノベーションのいいところですね。
ご家族の思い出深い窓は既存のまま残しました。この家の魅力を十分に活かすためにも、楽に片づけができるように間取りを変えています。
一方、間取りで大きく変更したのはキッチンや水回りです。以前はキッチンに立つと景色が見えづらく、また、水回りへも動きにくい状況でした。マンションのフォルムが台形である上に、リビングの広さを優先させたことで窮屈な配置になっていたようです。そこで、今回は台形に合わせた無理のないレイアウトにすることで、美しい眺めやスムーズな動線を目指しました。
キッチンからも眺望を楽しめるよう、東側の外壁に対してキッチンを直角に配置。また、以前より吹抜けに近づけることで見上げた時の開放感も叶えます。リビングは少し狭くなりますが、ソファやダイニングテーブル、出入口の配置などゾーニングの整理をして暮らしやすくしました。
キッチンから水回りにサッと行けるよう、浴室を北側から少し南側に移動し、ストレートな通路を確保。このレイアウトにすることで三世代が使いやすいよう洗面もワイドに。また、浴室は浴槽と窓の位置関係を工夫し、浴槽に浸かった時に自然な姿勢で景色を楽しめるようにしました。
以前はキッチンや浴室などの窓はジャロジー窓でしたので、やや眺めを損なったり隙間風もありました。今回は断熱サッシに変更することで、断熱性や気密性を高めると同時に、視界もスッキリさせています。
◆ 子ども室には可変性や安全性に配慮した工夫を
家族室(将来の子ども部屋)で工夫したのは可変性と安全性です。
将来仕切って2部屋の子ども室にしやすいよう、部分的に間仕切り壁を設けています。新たに設計した窓は間仕切り壁の位置に合わせて方立て(窓の区切り)を設けました。これにより、将来間仕切り壁を窓際まで延長した際に、窓と壁の納まりが良くなります。
お子様が男の子と女の子なのでプライバシーにも配慮。○の建具は当分ここに設置しておきますが、将来子ども室を仕切った場合には、A室の出入口に転用(そのまま移設できるよう、幅と高さをそろえて枠を設計してあります)。こうすると2つの独立した部屋が生まれ、お互いの部屋を通過せずに共用のWIC(ウォークインクローゼット)に行けるようになります。
この建物にはバルコニーがなく家の改修をするにあたってはその安全性も考えなければなりませんでしたが、特に子ども室は万が一を考え、下半分を開かないようにするなど開閉方法を工夫しました。
家族室の安全・可変性に配慮した窓
◆ 吹抜けを小さくしつつ開放感もキープ、そして上部の書斎をしっかり確保
M様邸は住まいの中心に吹抜けがあり、とても明るく開放的。ただその分、上階吹抜け上部の書斎が使いにくくなっていました。そこで、吹抜けを台形にして、ゆとりと独立性のある書斎スペースを確保。これにより、廊下を通る時にも景色が眺められ、下階から見上げると渡り廊下のように見え、遊び心をくすぐります。
吹抜けは小さくしても、見上げた時に3つの窓が見えるようにして、開放感も損なわないようにしました。また、キッチンと吹抜けを近づけたことで、以前より吹抜けの開放感を高めています
このように家のかたちに合わせた無理のない間取りを提案すると、今度は窓の位置などが合わなくなってしまいます。そこで、ベストな窓の位置を決め、開き方やサイズを一から設計し直しました。また、課題だった寒さを解消するため、すべての窓を断熱サッシに変更。ただし、工期やコストに響かないように、窓枠と外壁に触らずに窓の改修ができるカバーリングという手法を用いています。
◆ リノベプランに合わせて、ビル用オーダーメイドサッシを設計
今回のリノベーションに不可欠なのが窓の位置を生活に合わせて再構築すること。しかし通常、マンション区分所有の場合、窓は共用部なので変更できません(内窓を設けて断熱性を高めることは可能です)。M様の場合は、マンション全体の所有者なので、窓を変えることが可能でした。
◆ お客様の希望に「こうでなくてはできない」とは考えず「こうすればできる!」と柔軟に対応
M様のご要望は、外部修繕業者と窓も一緒にリノベを行って欲しいとのことでしたが、元請け業者同士が工事の打合せをすることは稀。しかし一般的なフローとは異なる場合でも、お客様の思いを優先して考え、ベストを尽くすのがスタイル工房。外部修繕業者さんと協力して工事を進められるよう、事前に2社で打ち合わせをしました。
居住空間の工事請負=スタイル工房
外部修繕の工事請負=一友ビルドテック株式会社(https://ichi-you.jp/)
本来は別々に契約する場合、打ち合わせはお客様がそれぞれとするもの。ですが、M様邸は間取りに合わせて窓のデザイン、位置、形、開閉方法も提案したので、窓の監修というかたちで、スタイル工房と一友ビルドテックが直接打合せをしました。
また、元請け業者2社が同時期に同現場に入ることもないのですが、工事をきっちり前後に分ける工程は組めませんでした。工事工程が変えられない以上、両社でスケジュールを調整することは不可欠でした。
ビル用のオーダーメイドサッシの製作には1か月を要します。形状・仕様、を決定し、サッシ製作開始、解体、サッシ取り付け、内装工事開始…とスケジュールを逆算しながら、お互いの工事日の日程を細かく調整することで2業者が同時期に現場に入らなくてすむよう安全面も確保しました。
スタイル工房は、お客様のご希望に「こうでなくてはできない」とは考えず、「こうすればできる!」という考えでベストを尽くします。
2社の打合せを、お施主様宅で開催
M様邸は珍しいケースですが、家はさまざまな職人さんたちと関わってつくりあげていくもの。次回の内装工事では、課題だった収納の製作にフォーカス。大工さんや家具職人さん、建具職人さんとどんなやりとりをしながら仕事を進めたのかをレポートします。
第4弾はマンションを外部修繕業者やさまざまな職人とコラボして再生している物件です。依頼者は賃貸マンション1棟を所有し、最上階メゾネットに3世代で暮らすオーナーM様ご家族。
ちょっと一般的なケースとは異なるのですが、スタイル工房が「柔軟にお客様のご要望にお応えしている」事例としてご紹介したいと思います。
◆ M様邸vol1. 窓からの景色も提案。オーナー住戸のリノベーション
◆ M様邸vol2. 大工や家具職人が力を合わせて 理想のリノベーションを追求
◆ M様邸vol3. 暮らしやすさはもちろん、空間の見え方や 色のニュアンスまで期待以上に
◆ 築30年による老朽化やデュアルライフをきっかけに、子世帯ご家族にとって暮らしやすい住まいを目指す
リノベのきっかけは建築から30年が経ち、雨漏りをはじめ老朽化が進んでいたこと。また、お母様がデュアルライフを始められたことで、主に暮らしているのが子世帯になり、生活スタイルが変わっていたことでした。そこで、外部修繕を行なうのと同時に、子世帯の暮らしやすい住まいにリノベーションしようというお考えになりました。
これがビフォー図面。2層分をつないだメゾネットタイプです。マンションでありながら2階建て戸建て住宅のようなつくり。
◆ のびやかで眺めがよく、遊び心のある住まいを目指して
プランニングは主に子世帯と進めました。そこで明らかになった以前の課題は次のようなもの。
◎おもしろいな、と思う空間にしたいが、スッキリと片付けられるようにもしたい
◎窓がたくさんあって明るく、最上階で眺めが良かったものの窓がシングルガラスサッシなので夏暑く冬は寒かった
◎床面積の割に収納が不足していた
◎大きな三角形の吹抜けはユニークだったが、そのおかげで書斎が狭かった
そこで、さらに眺望を楽しめ、遊び心がありながらも美しく片付く住まいをご提案しました。
左/明るい吹抜けを望む書斎。見晴らしはいいものの、ちょっと窮屈でした。右/ご家族みなさんモノづくりがお好きで、いろいろな創作活動をされているということで、リビングには多くのモノや道具があふれていました。
◆ 生活空間と窓の位置関係を見直して眺めをよくし、複層ガラスにすることで快適さもアップ
今回、リビングにある一番大きな窓は変更していません。この窓には額縁のような太い縁取りがあって、景色を風景画のように美しく見せていました。いいものや思い出の詰まったものは使い続けるということも、リノベーションのいいところですね。
ご家族の思い出深い窓は既存のまま残しました。この家の魅力を十分に活かすためにも、楽に片づけができるように間取りを変えています。
一方、間取りで大きく変更したのはキッチンや水回りです。以前はキッチンに立つと景色が見えづらく、また、水回りへも動きにくい状況でした。マンションのフォルムが台形である上に、リビングの広さを優先させたことで窮屈な配置になっていたようです。そこで、今回は台形に合わせた無理のないレイアウトにすることで、美しい眺めやスムーズな動線を目指しました。
キッチンからも眺望を楽しめるよう、東側の外壁に対してキッチンを直角に配置。また、以前より吹抜けに近づけることで見上げた時の開放感も叶えます。リビングは少し狭くなりますが、ソファやダイニングテーブル、出入口の配置などゾーニングの整理をして暮らしやすくしました。
キッチンから水回りにサッと行けるよう、浴室を北側から少し南側に移動し、ストレートな通路を確保。このレイアウトにすることで三世代が使いやすいよう洗面もワイドに。また、浴室は浴槽と窓の位置関係を工夫し、浴槽に浸かった時に自然な姿勢で景色を楽しめるようにしました。
以前はキッチンや浴室などの窓はジャロジー窓でしたので、やや眺めを損なったり隙間風もありました。今回は断熱サッシに変更することで、断熱性や気密性を高めると同時に、視界もスッキリさせています。
◆ 子ども室には可変性や安全性に配慮した工夫を
家族室(将来の子ども部屋)で工夫したのは可変性と安全性です。
将来仕切って2部屋の子ども室にしやすいよう、部分的に間仕切り壁を設けています。新たに設計した窓は間仕切り壁の位置に合わせて方立て(窓の区切り)を設けました。これにより、将来間仕切り壁を窓際まで延長した際に、窓と壁の納まりが良くなります。
お子様が男の子と女の子なのでプライバシーにも配慮。○の建具は当分ここに設置しておきますが、将来子ども室を仕切った場合には、A室の出入口に転用(そのまま移設できるよう、幅と高さをそろえて枠を設計してあります)。こうすると2つの独立した部屋が生まれ、お互いの部屋を通過せずに共用のWIC(ウォークインクローゼット)に行けるようになります。
この建物にはバルコニーがなく家の改修をするにあたってはその安全性も考えなければなりませんでしたが、特に子ども室は万が一を考え、下半分を開かないようにするなど開閉方法を工夫しました。
家族室の安全・可変性に配慮した窓
◆ 吹抜けを小さくしつつ開放感もキープ、そして上部の書斎をしっかり確保
M様邸は住まいの中心に吹抜けがあり、とても明るく開放的。ただその分、上階吹抜け上部の書斎が使いにくくなっていました。そこで、吹抜けを台形にして、ゆとりと独立性のある書斎スペースを確保。これにより、廊下を通る時にも景色が眺められ、下階から見上げると渡り廊下のように見え、遊び心をくすぐります。
吹抜けは小さくしても、見上げた時に3つの窓が見えるようにして、開放感も損なわないようにしました。また、キッチンと吹抜けを近づけたことで、以前より吹抜けの開放感を高めています
このように家のかたちに合わせた無理のない間取りを提案すると、今度は窓の位置などが合わなくなってしまいます。そこで、ベストな窓の位置を決め、開き方やサイズを一から設計し直しました。また、課題だった寒さを解消するため、すべての窓を断熱サッシに変更。ただし、工期やコストに響かないように、窓枠と外壁に触らずに窓の改修ができるカバーリングという手法を用いています。
◆ リノベプランに合わせて、ビル用オーダーメイドサッシを設計
今回のリノベーションに不可欠なのが窓の位置を生活に合わせて再構築すること。しかし通常、マンション区分所有の場合、窓は共用部なので変更できません(内窓を設けて断熱性を高めることは可能です)。M様の場合は、マンション全体の所有者なので、窓を変えることが可能でした。
◆ お客様の希望に「こうでなくてはできない」とは考えず「こうすればできる!」と柔軟に対応
M様のご要望は、外部修繕業者と窓も一緒にリノベを行って欲しいとのことでしたが、元請け業者同士が工事の打合せをすることは稀。しかし一般的なフローとは異なる場合でも、お客様の思いを優先して考え、ベストを尽くすのがスタイル工房。外部修繕業者さんと協力して工事を進められるよう、事前に2社で打ち合わせをしました。
居住空間の工事請負=スタイル工房
外部修繕の工事請負=一友ビルドテック株式会社(https://ichi-you.jp/)
本来は別々に契約する場合、打ち合わせはお客様がそれぞれとするもの。ですが、M様邸は間取りに合わせて窓のデザイン、位置、形、開閉方法も提案したので、窓の監修というかたちで、スタイル工房と一友ビルドテックが直接打合せをしました。
また、元請け業者2社が同時期に同現場に入ることもないのですが、工事をきっちり前後に分ける工程は組めませんでした。工事工程が変えられない以上、両社でスケジュールを調整することは不可欠でした。
ビル用のオーダーメイドサッシの製作には1か月を要します。形状・仕様、を決定し、サッシ製作開始、解体、サッシ取り付け、内装工事開始…とスケジュールを逆算しながら、お互いの工事日の日程を細かく調整することで2業者が同時期に現場に入らなくてすむよう安全面も確保しました。
スタイル工房は、お客様のご希望に「こうでなくてはできない」とは考えず、「こうすればできる!」という考えでベストを尽くします。
2社の打合せを、お施主様宅で開催
M様邸は珍しいケースですが、家はさまざまな職人さんたちと関わってつくりあげていくもの。次回の内装工事では、課題だった収納の製作にフォーカス。大工さんや家具職人さん、建具職人さんとどんなやりとりをしながら仕事を進めたのかをレポートします。