vol.3 耐震レベルと、贈与税の非課税措置
2017年2月8日(水)
築33年のご実家を受け継ぎ、耐震等級を獲得しつつ、高断熱・創エネルギーの家を目指したH様邸のリノベーション。
解体が終わり、耐震工事に入りました。耐震工事は、ご家族が安心・安全に暮らすためには必要不可欠な工事ですが、H様邸では贈与税の非課税措置を最大限活用するために打ち合わせ開始から「耐震等級2」という基準まで引き上げることにしていました。
◆ vol.1 世界を旅して思う。 「生まれ育った家をリノベして暮らす」ということ、「自然の循環の一部」ということ
◆ vol.2 ご両親の思いの詰まった家を、解体する。
◆贈与税の非課税措置の利用
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置とは、
父母や祖父母などの直系尊属から、自己の居住の用に供する住宅の新築若しくは 取得又は増改築等の
ための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を贈与により取得した場合において、下記の金額までの
贈与につき贈与税が非課税となる制度です。
(出典:国土交通省 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について)
http://www.mlit.go.jp/common/001157471.pdf
通常、贈与を受けた時には金額に応じて贈与税がかかってきますが、リノベーション工事のための資金として贈与を受けた場合、一定額まで非課税となる措置があります。こちらを利用するには受贈者や家屋についての諸条件がいくつかありますが、H様がこの非課税枠を利用するためには、事前に満たさなければならない項目が2つありました。
①家の名義がリノベーションをする本人になっていること。(名義をご自身に変更しておくこと)
②自己居住用の家が対象となること。(H様ご家族の住民票を工事着工前ご実家に変更しておくこと)
ご両親からリノベーション資金を援助してもらいたいと思っても、事前にやっておかなければならなかったことがあとから判明し、やむを得ずあきらめなければならないとしたら、とてももったいないですよね。スタイル工房では事前にH様のご要望や資金計画を伺っていたので、それに伴ったご提案をすることができました。
また、さらに省エネや耐震の基準を満たした「質の高い住宅」としての工事をし、第三者機関から発行された「住宅性能証明書」を添付し贈与税の申告をすると非課税枠が大幅に拡大されます。H様の工事ではこの非課税枠を拡大させるべく、耐震でさらに厳しい基準をクリアするように計画していったのです。
◆非課税枠を「最大限活用」するには新築並みの基準に適合させれば可能!
非課税枠を最大限に活用するには、「質の高い住宅」として下記の①~③のいずれかの基準に適合させ、そしてそれを設計・審査申請・検査合格させることが必要です。今回は費用対効果を考え、②耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2を目指すことになりました。
① 断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4以上の住宅
② 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上又は免震建築物の住宅
③ 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上の住宅
【住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について】
出典:国土交通省 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について
◆「質の高い住宅」とは?
既存住宅で「耐震等級2」は難易度が高い。。。その訳は…
築30年以上の既存住宅を「耐震等級2」まで引き上げるには、その評点を1.25以上とするだけではなく、構造検討もしなければなりません。新築とは異なり、耐震補強と呼ばれる工事以外にも基礎と木造部の健全なつながりを入念に検討し、作らなければいけませんでした。
ほかにも、既存住宅で「耐震等級2」を証明することが難しい理由は①既存住宅の図面が残っていないので現況把握に手間がかかること②平面の形の偏り、重さの偏りを耐震補強に反映させるため構造検討すべきことが多いためです。H様邸もくびれのある平面の形で、さらに太陽光パネルを載せるため、構造検討は多岐に及びました。
これを第三者機関(指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人のいず
れか)と審査のやりとりをし、工事完了検査を受け合格後、「住宅性能証明書」を発行してもらい、やっと非課税枠の拡大を申告する準備ができるわけです。
審査のために用意した図面や書類の一部。
◆「住宅性能証明書」の取得で安心・安全なおうちに…
H様邸では「贈与税の非課税措置の拡大」のため、耐震補強を明確な基準である「耐震等級2*」へ引き上げることになりましたが、お客様にとって金銭面はもちろん、33年築の建物の構造がより安全であることが証明されたわけです。
*極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力(建築基準法施行令第 88 条第3項に定めるもの)の 1.25 倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度)※国土交通省サイトより
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/hinkaku/point/2_1.pdf
この「耐震等級2」の獲得は残念ながら、必ずしもすべての建物で叶うわけではありません。ですが、耐震等級を今以上に上げることは思ったほど大きな費用がかかるわけではなく、しかも安心・安全な建物を増やすことが期待でき、さらに既存住宅活性化にも繋がる大変意義のあるものだと思います。
実際、既存住宅の改修において年齢層が上がるほど「中古住宅購入」によるものより、実家をリノベーションする方が多くなっています。
その際、リノベーションに携わるものとして、お伝えしておきたい大事なことは「改修図面」も一緒に次世代に受け継いでいってもらいたいということ。
そして、実家リノベの資金解決の一旦としてこの制度をもっとわかりやすく利用できるよう、一層周知されるべきだとプランナーは実感したそうです。
さて、ご家族の思いがこもったH様邸のお住まいの次回のレポートは、補助金を利用しての省エネ断熱リノベーションについてご紹介いたします。お楽しみに!
解体が終わり、耐震工事に入りました。耐震工事は、ご家族が安心・安全に暮らすためには必要不可欠な工事ですが、H様邸では贈与税の非課税措置を最大限活用するために打ち合わせ開始から「耐震等級2」という基準まで引き上げることにしていました。
◆ vol.1 世界を旅して思う。 「生まれ育った家をリノベして暮らす」ということ、「自然の循環の一部」ということ
◆ vol.2 ご両親の思いの詰まった家を、解体する。
◆贈与税の非課税措置の利用
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置とは、
父母や祖父母などの直系尊属から、自己の居住の用に供する住宅の新築若しくは 取得又は増改築等の
ための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を贈与により取得した場合において、下記の金額までの
贈与につき贈与税が非課税となる制度です。
(出典:国土交通省 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について)
http://www.mlit.go.jp/common/001157471.pdf
通常、贈与を受けた時には金額に応じて贈与税がかかってきますが、リノベーション工事のための資金として贈与を受けた場合、一定額まで非課税となる措置があります。こちらを利用するには受贈者や家屋についての諸条件がいくつかありますが、H様がこの非課税枠を利用するためには、事前に満たさなければならない項目が2つありました。
①家の名義がリノベーションをする本人になっていること。(名義をご自身に変更しておくこと)
②自己居住用の家が対象となること。(H様ご家族の住民票を工事着工前ご実家に変更しておくこと)
ご両親からリノベーション資金を援助してもらいたいと思っても、事前にやっておかなければならなかったことがあとから判明し、やむを得ずあきらめなければならないとしたら、とてももったいないですよね。スタイル工房では事前にH様のご要望や資金計画を伺っていたので、それに伴ったご提案をすることができました。
また、さらに省エネや耐震の基準を満たした「質の高い住宅」としての工事をし、第三者機関から発行された「住宅性能証明書」を添付し贈与税の申告をすると非課税枠が大幅に拡大されます。H様の工事ではこの非課税枠を拡大させるべく、耐震でさらに厳しい基準をクリアするように計画していったのです。
◆非課税枠を「最大限活用」するには新築並みの基準に適合させれば可能!
非課税枠を最大限に活用するには、「質の高い住宅」として下記の①~③のいずれかの基準に適合させ、そしてそれを設計・審査申請・検査合格させることが必要です。今回は費用対効果を考え、②耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2を目指すことになりました。
① 断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4以上の住宅
② 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上又は免震建築物の住宅
③ 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上の住宅
【住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について】
出典:国土交通省 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について
◆「質の高い住宅」とは?
既存住宅で「耐震等級2」は難易度が高い。。。その訳は…
築30年以上の既存住宅を「耐震等級2」まで引き上げるには、その評点を1.25以上とするだけではなく、構造検討もしなければなりません。新築とは異なり、耐震補強と呼ばれる工事以外にも基礎と木造部の健全なつながりを入念に検討し、作らなければいけませんでした。
ほかにも、既存住宅で「耐震等級2」を証明することが難しい理由は①既存住宅の図面が残っていないので現況把握に手間がかかること②平面の形の偏り、重さの偏りを耐震補強に反映させるため構造検討すべきことが多いためです。H様邸もくびれのある平面の形で、さらに太陽光パネルを載せるため、構造検討は多岐に及びました。
これを第三者機関(指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人のいず
れか)と審査のやりとりをし、工事完了検査を受け合格後、「住宅性能証明書」を発行してもらい、やっと非課税枠の拡大を申告する準備ができるわけです。
審査のために用意した図面や書類の一部。
◆「住宅性能証明書」の取得で安心・安全なおうちに…
H様邸では「贈与税の非課税措置の拡大」のため、耐震補強を明確な基準である「耐震等級2*」へ引き上げることになりましたが、お客様にとって金銭面はもちろん、33年築の建物の構造がより安全であることが証明されたわけです。
*極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力(建築基準法施行令第 88 条第3項に定めるもの)の 1.25 倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度)※国土交通省サイトより
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/hinkaku/point/2_1.pdf
この「耐震等級2」の獲得は残念ながら、必ずしもすべての建物で叶うわけではありません。ですが、耐震等級を今以上に上げることは思ったほど大きな費用がかかるわけではなく、しかも安心・安全な建物を増やすことが期待でき、さらに既存住宅活性化にも繋がる大変意義のあるものだと思います。
実際、既存住宅の改修において年齢層が上がるほど「中古住宅購入」によるものより、実家をリノベーションする方が多くなっています。
その際、リノベーションに携わるものとして、お伝えしておきたい大事なことは「改修図面」も一緒に次世代に受け継いでいってもらいたいということ。
そして、実家リノベの資金解決の一旦としてこの制度をもっとわかりやすく利用できるよう、一層周知されるべきだとプランナーは実感したそうです。
さて、ご家族の思いがこもったH様邸のお住まいの次回のレポートは、補助金を利用しての省エネ断熱リノベーションについてご紹介いたします。お楽しみに!