リノベーションに向けたO様の想い、プランナーの想い 〜O様邸 Vol.2〜
2023年8月15日(火)
リノベーションのリアルな現場をお伝えする「リノベ密着レポ」。新築並みの気密性と断熱性を希望するO様邸のリノベーションをスタイル工房が手がけることになり、プラン提案はどのように進んだのでしょうか?担当プランナーの渡辺に話を聞いてみました。
◆リノベでも、新築同然の気密・断熱性は可能? 〜O様邸Vol.1〜
◆リノベーションに向けたO様の想い、プランナーの想い 〜O様邸Vol.2〜
◆初めての試み、いざ気密検査を実施! 〜O様邸Vol.3〜
◆暖かく快適なわが家で、これからも楽しく末永く 〜O様邸Vol.4〜
渡辺●建物の概要からリノベーションのご要望まで、ご自身でまとめた資料を持ってこられました。なかなかそこまでされるお客様はいらっしゃらないので、とリノベーションに対して色々勉強され、しっかりと深く考えているのが伝わってきましたね。
――O様は、住宅性能についても具体的な希望をお持ちだったんですよね。
渡辺●そうですね。持ってらっしゃった資料に「HEAT20のG2レベルにしたい」とはっきり明記されていました。気密性はC値という値で示すのですが、そこも色々調べられて「C値1未満」を希望とのことでした。これがなかなか…。え!新築ではなく、リノベーションでG2レベルですか?!みたいな感じでしたね。
――リノベーションで具体的な数値を目指すこと自体、あまり無いことなのでしょうか。
渡辺●数値を目指すことは建物全体に関わるため全面改修になります。一般的なリノベーションでは、既存の建物の状態と予算とのバランスを考えながら、それをお客様の感じている不便や家での過ごし方に合わせてプランニングしていきます。断熱性能に関しても、全面ではない「部分断熱」という考え方もあります。例えば、長い時間を過ごすLDKやヒートショックを起こしやすい水回りのみ断熱したり、窓のサッシや玄関など熱損失の大きいところから断熱したり、工事にメリハリをつけることもあります。
あくまで、そのお客様がこれから何年快適に住み続けたいかというライフプランに沿ってご提案するため、画一的に数値だけを追いかけることはしていませんね。もちろん「すき間風がある」などの具体的な不満は解消していきますが、実際に気密検査をしてC値を測るといったことは、リノベーションではほとんど行っていません。
――O様も、他社に「新築ならできるけれど」といった対応をされた経験があったようです。スタイル工房でも、ここまで住宅性能、しかも数値にこだわる工事は前例がなかったということでしょうか。
渡辺●はい。G2レベルは経験がありませんでした。社内でも、施工監理や設計のスタッフと一緒に、うちでお受けするかどうかを検討しました。リノベーションでの断熱性能に関しては教科書的なものがなく、建物ごとのケースバイケースになります。築古の鉄骨造は私たちにとってはチャレンジでした。
――その結果、お受けすることに。
渡辺●O様には「前例はないですが、チャレンジしてみます」とお伝えしました。O様と一緒に考え、進めていけるならできるかもしれません!と。
「住み心地はいかがですか?」引越し後のO夫妻と、渡辺と和田。
渡辺●2階については主寝室とウォークインクロゼット、親戚の方が泊まりに来たり、将来下宿することを想定した予備室、ご主人の書斎という構成は決まっていました。ご要望も具体的でしたね。
――その一方で、1階はリビングまわりを中心にかなり変わっています。
渡辺●最初のプランではお母様が同居されるとはいえお二人暮らしがメインとなるため、広すぎると使いづらいかも、とLDKをL字型に、コンパクトにしています。ダイニングの一角には奥様のテレワーク用のデスクを造作、リビングの隣には多目的室として、リビングとつなげても仕切っても使える場所をつくっています。
設計図面。勝手口があり、ダイニングとキッチン、リビングがL字型にゾーニングされています。
――コンパクトといっても、25帖以上なので十分広いですね……印象的なのが、お庭の方に抜ける勝手口です。
渡辺●O様のおうちは親戚などが集まることが多いということだったので、お客様も使うメイン玄関の他に、リビング側にも普段づかい用の玄関を提案しました。そのあと打合せを重ねるうちに、最大限広々と使いたいとのご要望で玄関はひとつになり、キッチンの横にはパントリー、洗面所側にもバックヤード的な収納など生活に合わせたプランに変わっていきました。
ゆったりとスペースをとったペニンシュラキッチンは、3人で立っても余裕!
――多目的室も、リビングの一部として広くなっていますね。
渡辺●キッチンをゆったりと広くしたので、リビングを想定していた部分にダイニングテーブルをおいて、多目的室としていたお部屋をリビングとして使うイメージですね。ファーストプランよりもLDKがひとつの大空間となっています。その分、玄関からキッチンに回遊できる廊下はLDKに取り込んで、室内に向いていた収納は、廊下側にしバックヤードとしてワンちゃんのグッズなどをしまえるようにしました。
リビングの壁の裏側が廊下収納でバックヤードとして、玄関と水まわり、キッチンをつなぐ。ワンちゃんのトイレもあるので床はフロアタイルに。
渡辺●お持ちのものから購入予定のものまで、サイズなども細やかにご連絡いただきました。広いおうちですが、広さだけでなく、使いやすさにもこだわって細部まで作り込みましたね。これまでタイヤやスコップなど、劣化しにくいものしか置けなかった地下室も、しっかりと断熱して収納として機能するようにしました。
スッキリと美しい納まりは、綿密な収納計画のたまもの!
――O様からのご要望や性能以外に、スタイル工房として実現したかった部分はありますか?
渡辺●ご両親が建てて、ご自身も生まれ育ったおうちです。お父様のこだわりが随所に感じられる立派な建物でしたので、その良さを生かしながら住みやすく高性能のおうちにすること、ですね。お母様のお部屋のドアや1階の欄間には、前のおうちのものを再利用しています。しっかりとつくられた階段の踏み板などもそのまま使いました。
――新しいけれど、どこか懐かしい実家の雰囲気があるのはそのせいですね。
渡辺●1階の、お母様が使うお部屋のドアは上部がR型で、当時特注でつくった立派なもの。新しい玄関ホールでもシンボリックな存在となってくれるはず。ご親戚がいらっしゃったときも、懐かしく感じていただけると思います。
思い出深いRドアの中は、既存の折り上げ天井に柄クロスをプラスした優美な空間。床は柔らかいコルクタイル。
――次回は断熱性と気密性にフォーカス!O様と工事部のスタッフにお話を聞きつつ、実際に気密検査の現場に密着させていただく予定です。
◆リノベでも、新築同然の気密・断熱性は可能? 〜O様邸Vol.1〜
◆リノベーションに向けたO様の想い、プランナーの想い 〜O様邸Vol.2〜
◆初めての試み、いざ気密検査を実施! 〜O様邸Vol.3〜
◆暖かく快適なわが家で、これからも楽しく末永く 〜O様邸Vol.4〜
「前例はないけど、一緒につくりましょう!」
――O様との最初の打合せはいかがでしたか?渡辺●建物の概要からリノベーションのご要望まで、ご自身でまとめた資料を持ってこられました。なかなかそこまでされるお客様はいらっしゃらないので、とリノベーションに対して色々勉強され、しっかりと深く考えているのが伝わってきましたね。
――O様は、住宅性能についても具体的な希望をお持ちだったんですよね。
渡辺●そうですね。持ってらっしゃった資料に「HEAT20のG2レベルにしたい」とはっきり明記されていました。気密性はC値という値で示すのですが、そこも色々調べられて「C値1未満」を希望とのことでした。これがなかなか…。え!新築ではなく、リノベーションでG2レベルですか?!みたいな感じでしたね。
――リノベーションで具体的な数値を目指すこと自体、あまり無いことなのでしょうか。
渡辺●数値を目指すことは建物全体に関わるため全面改修になります。一般的なリノベーションでは、既存の建物の状態と予算とのバランスを考えながら、それをお客様の感じている不便や家での過ごし方に合わせてプランニングしていきます。断熱性能に関しても、全面ではない「部分断熱」という考え方もあります。例えば、長い時間を過ごすLDKやヒートショックを起こしやすい水回りのみ断熱したり、窓のサッシや玄関など熱損失の大きいところから断熱したり、工事にメリハリをつけることもあります。
あくまで、そのお客様がこれから何年快適に住み続けたいかというライフプランに沿ってご提案するため、画一的に数値だけを追いかけることはしていませんね。もちろん「すき間風がある」などの具体的な不満は解消していきますが、実際に気密検査をしてC値を測るといったことは、リノベーションではほとんど行っていません。
――O様も、他社に「新築ならできるけれど」といった対応をされた経験があったようです。スタイル工房でも、ここまで住宅性能、しかも数値にこだわる工事は前例がなかったということでしょうか。
渡辺●はい。G2レベルは経験がありませんでした。社内でも、施工監理や設計のスタッフと一緒に、うちでお受けするかどうかを検討しました。リノベーションでの断熱性能に関しては教科書的なものがなく、建物ごとのケースバイケースになります。築古の鉄骨造は私たちにとってはチャレンジでした。
――その結果、お受けすることに。
渡辺●O様には「前例はないですが、チャレンジしてみます」とお伝えしました。O様と一緒に考え、進めていけるならできるかもしれません!と。
「住み心地はいかがですか?」引越し後のO夫妻と、渡辺と和田。
いよいよファーストプラン!最終的に、どこが変わった?
――そこから現地調査を経て、ファーストプランが出ましたが、2階はほぼファーストプランのままですね。もとは6帖・4.5帖の和室2間と、子ども室3室という5室に分かれていましたが…。渡辺●2階については主寝室とウォークインクロゼット、親戚の方が泊まりに来たり、将来下宿することを想定した予備室、ご主人の書斎という構成は決まっていました。ご要望も具体的でしたね。
――その一方で、1階はリビングまわりを中心にかなり変わっています。
渡辺●最初のプランではお母様が同居されるとはいえお二人暮らしがメインとなるため、広すぎると使いづらいかも、とLDKをL字型に、コンパクトにしています。ダイニングの一角には奥様のテレワーク用のデスクを造作、リビングの隣には多目的室として、リビングとつなげても仕切っても使える場所をつくっています。
設計図面。勝手口があり、ダイニングとキッチン、リビングがL字型にゾーニングされています。
――コンパクトといっても、25帖以上なので十分広いですね……印象的なのが、お庭の方に抜ける勝手口です。
渡辺●O様のおうちは親戚などが集まることが多いということだったので、お客様も使うメイン玄関の他に、リビング側にも普段づかい用の玄関を提案しました。そのあと打合せを重ねるうちに、最大限広々と使いたいとのご要望で玄関はひとつになり、キッチンの横にはパントリー、洗面所側にもバックヤード的な収納など生活に合わせたプランに変わっていきました。
ゆったりとスペースをとったペニンシュラキッチンは、3人で立っても余裕!
――多目的室も、リビングの一部として広くなっていますね。
渡辺●キッチンをゆったりと広くしたので、リビングを想定していた部分にダイニングテーブルをおいて、多目的室としていたお部屋をリビングとして使うイメージですね。ファーストプランよりもLDKがひとつの大空間となっています。その分、玄関からキッチンに回遊できる廊下はLDKに取り込んで、室内に向いていた収納は、廊下側にしバックヤードとしてワンちゃんのグッズなどをしまえるようにしました。
リビングの壁の裏側が廊下収納でバックヤードとして、玄関と水まわり、キッチンをつなぐ。ワンちゃんのトイレもあるので床はフロアタイルに。
実家への愛着を大切に、これからも暮らしやすい家に
――収納といえば、O様はニッチの場所や広さ、置きたいものに至るまで、細かく指定されています。渡辺●お持ちのものから購入予定のものまで、サイズなども細やかにご連絡いただきました。広いおうちですが、広さだけでなく、使いやすさにもこだわって細部まで作り込みましたね。これまでタイヤやスコップなど、劣化しにくいものしか置けなかった地下室も、しっかりと断熱して収納として機能するようにしました。
スッキリと美しい納まりは、綿密な収納計画のたまもの!
――O様からのご要望や性能以外に、スタイル工房として実現したかった部分はありますか?
渡辺●ご両親が建てて、ご自身も生まれ育ったおうちです。お父様のこだわりが随所に感じられる立派な建物でしたので、その良さを生かしながら住みやすく高性能のおうちにすること、ですね。お母様のお部屋のドアや1階の欄間には、前のおうちのものを再利用しています。しっかりとつくられた階段の踏み板などもそのまま使いました。
――新しいけれど、どこか懐かしい実家の雰囲気があるのはそのせいですね。
渡辺●1階の、お母様が使うお部屋のドアは上部がR型で、当時特注でつくった立派なもの。新しい玄関ホールでもシンボリックな存在となってくれるはず。ご親戚がいらっしゃったときも、懐かしく感じていただけると思います。
思い出深いRドアの中は、既存の折り上げ天井に柄クロスをプラスした優美な空間。床は柔らかいコルクタイル。
――次回は断熱性と気密性にフォーカス!O様と工事部のスタッフにお話を聞きつつ、実際に気密検査の現場に密着させていただく予定です。