初めての試み、いざ気密検査を実施! 〜O様邸 Vol.3〜
2023年8月29日(火)
リノベーションのリアルな現場をお伝えする「リノベ密着レポ」。気密性と断熱性にこだわったO様邸のリノベーションです。今回は無事竣工したおうちの、2度目の気密検査に密着!施工監理の歌田と設計の高木、和田にも話を聞きました。
◆リノベでも、新築同然の気密・断熱性は可能? 〜O様邸Vol.1〜
◆リノベーションに向けたO様の想い、プランナーの想い 〜O様邸Vol.2〜
◆初めての試み、いざ気密検査を実施! 〜O様邸Vol.3〜
◆暖かく快適なわが家で、これからも楽しく末永く 〜O様邸Vol.4〜
高木●断熱等級6は2022年に設定されたばかりの基準で、地域によっても違うのですが、東京では冷暖房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね30%削減可能なレベルとされています。現在の断熱等級は7が最高です。
――リノベーションでこのような数値を出すのは、かなり難しいことなのでしょうか。
高木●もちろん、工事自体は可能です。実際にスタイル工房が通常行っているリノベーションでは、断熱等級5をスタンダードな基準としており、予算をかければそれ以上を目指すことはできます。
ただし、O様のおうちは鉄骨造ということでした。鉄は熱伝導率が高い、つまり熱を伝えやすい素材なんです。外の暑さ、寒さが室内に伝わりやすいので、木造などに比べると、断熱性能を上げにくいという特徴があります。また、鉄骨ALC造ということで、使用されているALC板に断熱材を密着させづらいという施工上の難しさもありました。
――もともと断熱性能を上げにくい素材である上に、施工も難しいのですね。
気密性はいかがですか? C値1以下がご希望とのことでしたが…。
高木●C値は相当すき間面積といって、単位は ㎠/㎡です。たとえば延床面積100㎡の家のC値が 1.0㎠/㎡であれば、家のすき間の合計は 100 ㎠、つまり、10cm四方の正方形程度であるということになります。一般に「高気密住宅」をうたう新築住宅は、このC値1以下を基準としていることが多いですね。
――こちらもやはり、鉄骨造ならではの難しさはあるのですか?
高木●はい。断熱性能と同じで、断熱材や気密シートが密着しづらく、気密性を確保するのが難しい構造ですね。ましてや、気密検査を実施するのも初めてだったので…。
和田●高気密住宅を売りにしている住宅メーカーや工務店が、新築時に実施するイメージです。もちろん、お客様から要望があれば検査自体はいつでもできますが、リノベーションではほとんど聞いたことがありません。しかも鉄骨造で?!という感じで、スタイル工房としても力が入りましたね。
――具体的にはどんなことを行うのですか?
歌田●正確には「気密測定検査」といって、専門の業者に依頼して行います。まず家の窓などを全て閉め切り、換気口などもふさいだ状態で、窓に気密測定器を設置します。送風機によって室内の空気を外に出すことで気圧差が生まれ、隙間から空気が家の中に戻ろうとするため、その空気の量で隙間の大きさが割り出されるという仕組みです。
あらゆる換気口を目張りしてふさぎ、ラッパのようなもので室内の空気を抜く「減圧法」で測定しました。
――2回実施していますが、それはなぜですか?
歌田●測定は、断熱工事の完了時点で1度目の検査をしました。内装仕上げ後の測定は希望の測定値に達しなくてももう手直しができないのであまりしないと業者さんからは聞きました。今回はO様のご希望で2度実施しています。O様邸の場合は、発泡ウレタン吹付け工事が終わった後に1度目の検査をしました。この時点で一度測定を行う事で、隙間のある場所を見つけて、改善することができます。
――1度目の検査では、C値は1.0が最高だったそうですね。
歌田●1度目のウレタン吹付工事後の検査では、何度か測定し最初はC値1.8-1.6でした。新築でもC値3程度が出ることはよくあるので、リノベーションでこの数値は決して悪くないのですが、ご希望の1以下ではありませんでした。そこで、隙間のある場所を割り出して、気密シートを貼り直す、プラスするなど、さらにしっかりと施行して再度測定したところC値1.0になりました。
1度目と2度目の検査の間に設備工事や内装工事を施工していく中で、気密シートを貫通するところもでてきます。それをその都度ふさいでいきました。
和田●それにO様はご自身でも風速・温度測定器を購入し、すき間風の強さや出てくる場所を測るほどでした。O様の情熱が私たちにも伝わってきて、試行錯誤しながらも、気密の大切さや施工について学べたと思います。
O様自前の風速・温度測定器。スマートフォンと連動し、数値が表示されます。
歌田●1回の検査の中でも何度か数値を測るのですが、最初はC値0.9でしたね。測定士の方にも、「年間300棟くらい気密検査をするなかで、リノベーションで0.9は初めて見た」と嬉しい言葉をいただきました。それでもお客さまも一緒に気密のあまい部分を探し出しその日に補強もしていきました。
――この日、2回目の測定の時はさらに数値が下がって、C値0.7まで出たそうです。O様のご希望を叶えることができましたね!
確かにC値0.7と出ています!
――O様邸の工事に限らず、スタイル工房の施工監理として大切にしていることはどういったことでしょうか。
歌田●やはり手を動かすのは大工さんなので、大工さんにこだわりとプライドをもって現場に臨んでもらうことですね。特に、断熱性能は「ここにこれくらいの断熱工事を施すことで、これだけの断熱効果があるはず」という理論値なので、実際の施工がきっちりできていることが大前提です。
――無事、目標値をクリアできたO邸。引き渡しを経て、次回の最終回では再びO様夫妻に、おうちの住み心地などを伺ってみたいと思います。
◆リノベでも、新築同然の気密・断熱性は可能? 〜O様邸Vol.1〜
◆リノベーションに向けたO様の想い、プランナーの想い 〜O様邸Vol.2〜
◆初めての試み、いざ気密検査を実施! 〜O様邸Vol.3〜
◆暖かく快適なわが家で、これからも楽しく末永く 〜O様邸Vol.4〜
リノベーションの断熱性能、等級6はどのくらいの難易度?
――今回のリノベーションでは、O様はHEAT20のG2レベル(≒等級6)を希望されていますね。これはどのくらいの断熱性能を指しているのでしょうか。高木●断熱等級6は2022年に設定されたばかりの基準で、地域によっても違うのですが、東京では冷暖房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね30%削減可能なレベルとされています。現在の断熱等級は7が最高です。
――リノベーションでこのような数値を出すのは、かなり難しいことなのでしょうか。
高木●もちろん、工事自体は可能です。実際にスタイル工房が通常行っているリノベーションでは、断熱等級5をスタンダードな基準としており、予算をかければそれ以上を目指すことはできます。
ただし、O様のおうちは鉄骨造ということでした。鉄は熱伝導率が高い、つまり熱を伝えやすい素材なんです。外の暑さ、寒さが室内に伝わりやすいので、木造などに比べると、断熱性能を上げにくいという特徴があります。また、鉄骨ALC造ということで、使用されているALC板に断熱材を密着させづらいという施工上の難しさもありました。
――もともと断熱性能を上げにくい素材である上に、施工も難しいのですね。
気密性はいかがですか? C値1以下がご希望とのことでしたが…。
高木●C値は相当すき間面積といって、単位は ㎠/㎡です。たとえば延床面積100㎡の家のC値が 1.0㎠/㎡であれば、家のすき間の合計は 100 ㎠、つまり、10cm四方の正方形程度であるということになります。一般に「高気密住宅」をうたう新築住宅は、このC値1以下を基準としていることが多いですね。
――こちらもやはり、鉄骨造ならではの難しさはあるのですか?
高木●はい。断熱性能と同じで、断熱材や気密シートが密着しづらく、気密性を確保するのが難しい構造ですね。ましてや、気密検査を実施するのも初めてだったので…。
ウレタン吹付け直後に、一度目の気密検査を実施
――気密検査というのは、通常、リノベーション会社が行うものなのでしょうか?和田●高気密住宅を売りにしている住宅メーカーや工務店が、新築時に実施するイメージです。もちろん、お客様から要望があれば検査自体はいつでもできますが、リノベーションではほとんど聞いたことがありません。しかも鉄骨造で?!という感じで、スタイル工房としても力が入りましたね。
――具体的にはどんなことを行うのですか?
歌田●正確には「気密測定検査」といって、専門の業者に依頼して行います。まず家の窓などを全て閉め切り、換気口などもふさいだ状態で、窓に気密測定器を設置します。送風機によって室内の空気を外に出すことで気圧差が生まれ、隙間から空気が家の中に戻ろうとするため、その空気の量で隙間の大きさが割り出されるという仕組みです。
あらゆる換気口を目張りしてふさぎ、ラッパのようなもので室内の空気を抜く「減圧法」で測定しました。
――2回実施していますが、それはなぜですか?
歌田●測定は、断熱工事の完了時点で1度目の検査をしました。内装仕上げ後の測定は希望の測定値に達しなくてももう手直しができないのであまりしないと業者さんからは聞きました。今回はO様のご希望で2度実施しています。O様邸の場合は、発泡ウレタン吹付け工事が終わった後に1度目の検査をしました。この時点で一度測定を行う事で、隙間のある場所を見つけて、改善することができます。
――1度目の検査では、C値は1.0が最高だったそうですね。
歌田●1度目のウレタン吹付工事後の検査では、何度か測定し最初はC値1.8-1.6でした。新築でもC値3程度が出ることはよくあるので、リノベーションでこの数値は決して悪くないのですが、ご希望の1以下ではありませんでした。そこで、隙間のある場所を割り出して、気密シートを貼り直す、プラスするなど、さらにしっかりと施行して再度測定したところC値1.0になりました。
1度目と2度目の検査の間に設備工事や内装工事を施工していく中で、気密シートを貫通するところもでてきます。それをその都度ふさいでいきました。
和田●それにO様はご自身でも風速・温度測定器を購入し、すき間風の強さや出てくる場所を測るほどでした。O様の情熱が私たちにも伝わってきて、試行錯誤しながらも、気密の大切さや施工について学べたと思います。
O様自前の風速・温度測定器。スマートフォンと連動し、数値が表示されます。
引渡し前、2度目の気密検査。前回検査から数値は変わる?
――そうして今回、引渡し前の気密検査です!歌田●1回の検査の中でも何度か数値を測るのですが、最初はC値0.9でしたね。測定士の方にも、「年間300棟くらい気密検査をするなかで、リノベーションで0.9は初めて見た」と嬉しい言葉をいただきました。それでもお客さまも一緒に気密のあまい部分を探し出しその日に補強もしていきました。
――この日、2回目の測定の時はさらに数値が下がって、C値0.7まで出たそうです。O様のご希望を叶えることができましたね!
確かにC値0.7と出ています!
――O様邸の工事に限らず、スタイル工房の施工監理として大切にしていることはどういったことでしょうか。
歌田●やはり手を動かすのは大工さんなので、大工さんにこだわりとプライドをもって現場に臨んでもらうことですね。特に、断熱性能は「ここにこれくらいの断熱工事を施すことで、これだけの断熱効果があるはず」という理論値なので、実際の施工がきっちりできていることが大前提です。
――無事、目標値をクリアできたO邸。引き渡しを経て、次回の最終回では再びO様夫妻に、おうちの住み心地などを伺ってみたいと思います。